本物の蕎麦が舞台に運ばれ、小悪党・直次郎が熱々の蕎麦をすする場面が登場する歌舞伎の人気演目「雪暮夜入谷畦道(ゆきのゆうべいりやのあぜみち)」(通称「直侍」)を含む通し狂言「天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)」が11月の新橋演舞場(東京・築地)「吉例顔見世大歌舞伎」昼の部(11時開演、25日まで)で上演されているが、初役で勤めた1985年の歌舞伎座以来、尾上菊五郎(七代目)が直次郎を25年ぶりに通しで演じていることが話題になっている。
江戸の外れの入谷田圃にある二八蕎麦屋。雪の降りしきる中をやってきたのは、お尋ね者の直次郎。恋人である遊女・三千歳(中村時蔵)が、自分を想うあまりに病気になり、この近くで養生に来ているという話を耳にする。江戸から逃げ落ちる前に一目逢いに来た直次郎は、追っ手に包囲されているとも知らず、熱い蕎麦で一時の安息を得るーー。
歌舞伎に蕎麦屋が出て来る演目は少なくないが、実際に蕎麦を食べる場面が登場するのは珍しい。「直侍」は五代目・菊五郎が当たり役とし、蕎麦を一息にすする粋な所作が評判を呼んだという。七代目・菊五郎も「直侍」はこれまでに6度演じ、当たり役としている。
夜の部(16時30分開演)の演目は、「ひらかな盛衰記(ひらかなせいすいき)」、「梅の栄(うめのさかえ)」、「都鳥廓白浪(みやこどりながれのしらなみ)」。「都鳥〜」では菊五郎、菊之助が親子競演する。
問い合わせ先:新橋演舞場=03-3541-2600
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