10月26日、埼玉県杉戸町の志学会高等学校で「第7回 武蔵の国そば打ち名人戦」が開催された。主催はそば塾彩蕎庵「全国ご当地そば伝統継承・推進協議会」。
当日は朝8時20分に受付が開始され、9時から開会式が行われた。今回の参加者は男性16名、女性8名の計24名。予選は制限時間45分で、各選手が持参したソバ粉を使用してそば打ちを行った。午前中は第1組から第3組までの予選競技が行われ、昼休みをはさんで午後に決勝進出者が発表された。
決勝に進んだのは男性6名、女性6名の12名。今回7回目を迎えた同大会では、回を重ねるごとに徐々に女性参加者が増え、今回は決勝進出者も女性最多となった。
決勝では、各選手が予選で打ったそば150gを茹でて、せいろに盛り付けて完了。茹で・食味審査は、大会の競技審査委員6名に4名の一般審査委員を加えた10名によって行われた。
競技後、競技審査委員の阿部成男氏(全麺協東日本支部長・そばネット埼玉代表理事)は今大会の総括として、「それぞれそばの打ち方や出来上がったそばに違いはありますが、みなさんは名人戦にふさわしい品格を持ってそば打ちを行っていると感じました。そば打ちはいかに楽しんで打って、自分が満足できるそばが出来るかです。その中でもそば打ちの基本がありますが、今日の大会では選手のみなさんのそばを延す時の立ち位置や、延し圧の確認不足が気になりました。そういったところを少し気をつけるだけでも全く違ってきます。茹でや水洗い、盛り付けについてもそれぞれが次の大会に向けて研究してみてください。大会を楽しんで、ぜひ来年も参加してください」と感想を述べた。
決勝の結果発表と表彰式は、審査委員長のほしひかる氏(江戸ソバリエ協会認定委員長)によって行われた。優勝は中国出身、埼玉県在住の小林秀美さんが獲得し、第7代名人に認定された。結果が発表されてから感極まった様子で涙ぐんでいた小林さんは、前回に続き今回が2回目の出場だった。「今日は、そば打ちの全国大会に出場している方が5人いましたので、その中で私が名人に選ばれて本当に驚きました。ソバ粉は私が通っているそば打ち道場がある地元、埼玉・杉戸町産の粗挽きを使用しました。前回の大会からは、週数回のペースで道場に通ってそば打ちの練習をしました。さらに月1回、老人ホームでそば打ちをして入居者に食べて頂く活動もしています。今日はとにかく美味しいそばをつくろうと、気持ちを込めてそば打ちをしました。頑張ってきて本当によかったです」(小林秀美さん)と思いを語った。小林さんはそば打ち歴3年半とまだ日が浅いにもかかわらず、名人認定という見事な快挙を遂げた。その他、準名人位を兵庫県在住の渡部結花さんと千葉県在住の篠崎正夫さん、努力賞を埼玉県在住の米田千鶴さんと、同じく埼玉県在住の柴崎友子さんが受賞した。
「武蔵の国そば打ち名人戦」は有名なソバの産地に囲まれた「武蔵の国」で、そばを「うまく食す」ための技術として卓越したそば打ち技術を身に付けた人達が競い、名人を決定するもの。回を重ねるごとに、そば打ち技術のレベルは上がり、参加者の熱気は増している。日本のそば文化継承・普及だけでなく地域の活性化にも大いに貢献している大会である。