投稿者 : sobashogun 投稿日時: 2022-08-08 23:26:55

 2022年7月30日(土)に、第15回「千葉県そば大学講座」が日本大学生産工学部津田沼キャンパス(千葉・習志野市)で開催された。19年の第12回講座以降、新型コロナウイルスの流行を受けて開催が見送られていたため、2年越しの開催となった。また今回は、感染症が完全には収束していないことから、講義会場を大教室に移す等の感染対策を行った上で開催された。なお、第12回から番号が飛んで第15回となった理由として、同講座を主催する「千葉県そば大学講座実行委員会」はコロナ禍という未曾有の出来事を記録に残すため、あえて第13回、第14回を欠番としたとのこと。また、講義の締めくくりには、今回のそば大学講座で博士・修士・学士の学位を得た参加者への学位授与式(写真1枚目)が行われた。
 今回の講座ではそばをテーマとした2つの発表と、実演形式のそば打ち指南が行われた。1つ目の発表は、世界そば研究家の稲澤 敏行氏(写真2枚目)による「めんの起源 ヘレニズムより誕生」。古代において資料が乏しく、一般的には中国発祥とされる麺であるが、稲澤氏は異なる見解を示す。講義において稲澤氏は、それまでそばがき等として食べられてきたそばが、中央アジアやチベットの仏教文化と結びつき、合掌儀礼の動作で麺をよってつくる「手より麺」と呼ばれる形になったと発表した。その根拠として稲澤氏は中国まで中央アジアを伝わってきた水車式の石臼の伝播地域と、手より麺の文化が残る地域の一致を挙げている。稲澤氏はさらに麺料理が日本に伝わった後、新しく生まれた「塩分使用」「水でさらす」といった製法を説明。中央アジアで生まれた麺が、島国で水が豊かな日本ならではの変化を遂げた過程を解説しつつ、講義を締めくくった。
 そして、信州大学農学部の井上 直人教授(写真3枚目)による講義「忍者食になったそば!」では、日本で古来から山伏(修験者)の携帯食として食されてきたそばが、いかにして忍者食として用いられるようになったかが、忍者と呼ばれる集団の歴史とともに語られた。また、井上氏は研究の一環として忍者食として知られる兵糧丸の再現にも取り組んでおり、氏が試作した兵糧丸の製法もあわせて公開された。
 実演形式のそば打ち講座では、越前そば道場・福井そば打ち愛好会の井 敏朗氏、香川県讃岐蕎麦道場の岸本 直子両名(写真4枚目)によるそば打ち指南が行われた。岸本氏による指南では、肘や腰といった部位負担がかかりづらい「持続可能なそば打ち」を指導。鉢の作業で高めの踏み台を使うことや、加水後の作業を手を開いて行うことで肘への負担を軽減するといった実戦的な知識を伝える講義となった。
 一方の井氏による講義では、全ての所作に無駄がない合理的なそばの打ち方が教示された。井氏は講義の中で、そば打ちの動作全ての理由を説明しながら指導した。加えて、講義ではそば打ち検定等で、初心者がつまづきがちな工程への補足を提案。そば打ち上級者にとっては、自身のそば打ちを見直すことに繋がり、また、そば打ち検定での合格を目指す人にとっては、ミスを減らし時間を無駄にしないために役立つ講義となった。




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