11月2日(土)昼。「石臼の会」秋の食べ歩き企画で、久〜〜〜しぶりに浅草「蕎亭 大黒屋」さんに会員7名で伺った。
昭和52年創業以来、「そばの道に終わりなし」と、美味しいお蕎麦を作り続けている店主菅野成雄・雅江御夫妻だが、今現在は、いろいろな事情もあり完全予約制コース料理のみ 木曜・金曜・土曜の18時〜21時限定のスタイルで営業している。
しかし今回は特別に、浅草「蕎亭 大黒屋」さんとご縁のある方が、たまたま私たち「石臼の会」の会員であるということで、お昼の時間を貸し切りにしてくださった。
■■石臼の話
店主菅野さんが、「皆さんは、石臼の会なんだから、石臼の話をしようか?」と言って、模型?を出してきてくださった。目立ての形の違いだ。
洒脱なお喋りの中で、つぎつぎに繋がって広がる蕎麦職人らしい理やこだわりが伺い知れ興味深く勉強になった。蕎麦仲間とこんなお話しを聞けることの幸せ。この日参加できなかった石臼の会会員の方々にも、蕎麦打ち会か何かの折にお伝えしたい。
2009年に書いた大黒屋さんの記事を読みなおしたら、菅野さんはその頃、石臼を8台お持ちだと聞いていた。2011年に同じく石臼の会でお邪魔した折にも2階の石臼群を見せていただき、目立ての話をしていただいたが、更に更にバージョンアップして な・な・なんと!今は12台の石臼をお持ちで、それらを駆使してそれぞれの蕎麦用に製粉しているとのこと。凄い!蕎麦道具も自作していらっしゃるし、そこまでするのか! いや、どこまで行くのか?と感嘆するばかり。
■■日本酒
先に述べたご縁の御蔭で、特別の更に特別ということで、我々はお酒の持ち込みを許された。
ということで、まずはこの日のお酒から書こう。
まずは、江戸開城 純米吟醸原酒 秋酒 (東京港醸造)。
このお酒は、石臼の会会長が古希祝でプレゼントされた頂き物だそうだ。とっておきの大切なそれを会長がこの日の会に提供してくださった。
私はこの蔵の話題をTVで観たことがあって、都会のど真ん中港区で、タンクごとに使用酵母や製造方法を変え多彩な味わいを作っていると知り、飲んでみたいと思っていた蔵のお酒だ。大喜びでご相伴に預かった。
会長の益々の健康を願い、お祝い・おめでたさもおすそ分け頂き、旨味がのった味わいと杏子様の酸味!とりわけ美味しかった。
次に、森泉 生原酒しぼったまんま(森民酒造店)酵母、酵素が活きているササニゴリの生原酒。濃醇で美味しかったぁ。東日本大震災で蔵の母屋が倒壊したが、みごと復旧したらしい。応援したい。
花巴 水酛生酒(美吉野醸造) まるでヨーグルトやチーズを思わせる私としては初めて日本酒で味わう発酵の感じ。この2本は大黒屋さんの近くの酒の大枡で購入し持ち込みのラインナップに加えた。
■■石臼の会の為の
鴨鍋のコース
やっとお料理の紹介。
焼き味噌
香ばしく焼いた白味噌ベースに蕎麦の実がザクザクはいった焼き味噌は、お酒のあてにぴったり。ちびりちびりと摘まんで、堪能した。
妙高粗挽きせいろ
新潟妙高の2年間貯蔵熟成させた「こそば」を24メッシュで篩い十割で麺に仕立てたもの。のど越し滑らかでふくよかな香味が強く感じられ、飛び切り美味しかった。供される辛汁は、出汁の旨味と返しの深みがどちらも尖らず混然一体となってすっきりと調和し、風味豊かな蕎麦を引き立てる。一流の蕎麦職人が、熟練の技でサラリと紡ぎだす一品は、粋だ。素人蕎麦打ち人ごときが四の五の言う水準のものでないし、言う気さえおきない。
なまり節味噌味
菅野店主とお手伝いをなさっている石臼の会会員の方が、つい先日「指宿・枕崎へ行きます。何か酒の肴になる様なものを探してきます。」と言って買ってきてくださったお土産。お・い・し・い。お酒がすすむぅ。
鴨すきうどん鍋
お出汁も美味しいし、たっぷりの野菜も嬉しい鴨すき。
締めのうどんは、葛飾区の金町農園で自家栽培している農林61号を手打ちしたもの。褐色がかった色と濃厚な風味、ふっくらもっちりとした食感も魅力的。
蕎麦寿司3種
こちらのお店は誰もが知る通り、蕎麦聖 片倉康雄さんの今はもぅ少なくなってしまった直弟子のお一人 菅野さんのお店。今でも片倉さんのことを「おやじ」と言う菅野さんも、やはり更科の美しい変わり蕎麦を打つ。これはその変わり蕎麦をきりりと巻いた蕎麦寿司。とても手間がかかるし、超絶技がいるんだぞぉ!とわかる。芝海老のおぼろ、酢蓮、干瓢、椎茸、切り三つ葉を入れて、こんなに綺麗にキュキュっとしまって巻かれた寿司を見たことがあっただろうか? 無いな、私は。うっとりする程、美しい。
蕎麦団子
粋な姿。甘さの具合もちょうどで、とても品が良い。ここまでの料理の余韻を感じられる甘味でコースをしめた。
参加者が思わず写真を撮った器も、ここに載せたい。
蕎麦の薬味入れは、蓋つきの塗の小箱
片倉一門が昭和天皇に蕎麦を打った時に使ったという蕎麦猪口。「雪・月・花」の藍色の文字が、ぐるりと入っている。
蕎麦をはじめ品書きの中の隅々に、ご店主のありようやお店のしつらえに、粋を感じる。片倉康雄さんの薫陶を受け、この浅草の地に育ったご主人が紡ぎだす店内に漂う空気感も、唯一無二で特別なものだと思う。
この日の特別で素晴らしいおもてなしに、感謝。
2009年6月23日 浅草「蕎亭 大黒屋」の記事を読む
2011年12月 浅草「蕎亭大黒屋」蕎麦を手繰って石臼の話を聞く会記事を読む
■住所台東区浅草4-39-2■電話03-3874-2986■営業時間木曜・金曜・土曜の18時〜21時00■アクセスつくばエクスプレス浅草駅徒歩10分、東京メトロ銀座線浅草駅徒歩15分